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溝口棄却取消訴訟弁護団東京事務局ニュース・準備号2003/11/20

溝口さん行政訴訟 裁判傍聴(第8回口頭弁論)のお願い
弁護団事務局:平郡 真也

と き /2003年12月5日 午前11:00〜
ところ/熊本地方裁判所 101号法廷

 今年も残すところ、あと1ヶ月となりました。春、夏にくらべ、秋は一段と月日の経つのが早いように感じられます。「師走」という言葉がぼぼ死語になっているとは言え、今年中にあれを片付けておこう、これだけはひと区切りつけなくちゃ、と急かされる思いに駆られ、何かと慌ただしく過ごしてしまう年の瀬です。
 皆さん、いかがお過ごしでしょうか?
 さて、溝口さんの裁判の口頭弁論が12月5日午前11:00から熊本地裁101号法廷で開かれます。提訴から丸2年、弁論も今回で8回目となります。
 最初に最近の裁判をめぐる話題をお伝えしておきましょう。
 まず、前回の弁論を傍聴された方、あるいは東京・告発発行のニュースをお読みの方は御存知のとおり、被告代理人(福岡法務局の訟務検事)が突然「まだ争点が整理できていない」と言い出しました。
 双方の主張がほぼ出そろい、争点が整理できたのを受け、さあいよいよ証拠調べ(証人尋問)に入ろうという矢先の発言です。これは形勢不利とみての時間かせぎなのか、真偽のほどは定かではありません。はっきりしているのは、訴訟の進行をいたずらに混乱、妨害させるものということ。
 そもそも「争点が整理できていない」と言うのなら、その責任は約1年にわたり一切準備書面を提出してこなかった被告にあります。それを棚上げにして、争点未整理の責任を裁判所や原告に転換しようという被告の態度はまさに厚顔無恥、許すことはできません。
 被告代理人の裁判に臨む態度に関して、これ以外にも気になることがあります。それは原告側第11準備書面の求釈明に対する被告の対応です。被告は第5準備書面の冒頭で「今回は途中まで回答し、残りはおって回答する」と述べていました。ところが前回の弁論では「釈明するかどうかも含めて検討中」と発言しました。
 争点未整理の発言と合わせて考えると、どうも被告の方針が一貫しないというか、腰が座っていないとの印象が否めません。なにか事情があるのでしょうか?
 それを探る手がかりとして、弁論に出席する被告代理人の顔ぶれが最近変わりました。これから推測すると、担当の訟務検事が大幅に交代となり、新しい布陣の考え方がこれまでのメンバーと違ってきているのかもしれません。
 もう一つの手がかりが、第8回の弁論の日程を決めるさいに「大きな事件が入っているので、少し延ばして欲しい」と言ったこと。「大きな事件」とは?熊日記事を少し丹念にチェックしてみると、次の4つの裁判が熊本地裁に係争中であることがわかりました。

1.川辺川ダム事業認定の取消しを求める訴訟
2.トンネル工事でじん肺になった作業員が、国を相手取り損害賠償を求める訴訟
3.原爆医療給付の認定申請を却下されたことに対し、その取消しを求める訴訟
4.ハンセン氏病国家賠償訴訟

 いずれも集団訴訟、被告が国(管轄は福岡法務局)、社会的注目度が高い。いま福岡法務局では溝口さんの裁判を含めて各裁判の対応に大わらわなのではないでしょうか。

 次の話題は、溝口さんの裁判を担当する裁判長=田中哲郎氏の資質、審理傾向です。熊本の支援の方に調べてもらったところ、「訴訟指揮はソフト、しかし結論(判決)は原告に厳しい」「私人VS私人(民間会社)の労働争議では原告勝利の判決はあるが、私人VS行政(県、国)の訴訟ではほとんど原告敗訴。つまり行政寄り、行政判断追認の傾向あり」。具体的な事件では、熊本県立大の外国人教師が解雇され地位確認を求めた訴訟で、大学側の裁量を広く認定、一方原告側の「外国人差別」「組合つぶし」との主張を根拠なしと一蹴して原告敗訴としました。
 「訴訟指揮はソフト」と聞いて、以前の進行協議(2002年9月2日ラウンドテーブル)の場面を思い浮かべる方も多いと思います。
 確かにあのとき田中裁判長は「水俣病のことはよくわかりません」「立証責任はどちらにあると考えたらいいのでしょうか?」など、控え目で謙虚、双方の意見を聞きたいとの態度。威丈高な物言いで、オレが仕切る、という様子は微塵も感じられませんでした。でも、これが本音なのか、たぬき親父の二面性なのか用心する必要がありそうです。
 被告代理人の内情にしろ、田中裁判長の審理傾向にしろ、原告側に有利な材料とはとてもえ言えません。法律上の議論とは別に、何らかの作戦を立てなければなりません。

 では12月5日の弁論に話を移しましょう。こうした経緯を踏まえ、今回の弁論で原告側は裁判所に対し、早急に証拠調べに入るよう、原告側申請の証人を採用するよう強く申し入れます。とくに力点をおいているのがチエさんを処分した当時の熊本県の公害部長・永野義之です。永野部長は、認定審査の実務を統轄する者であるのみならず、制度運用の方針を決定する過程にも参画しており、いわば認定業務の事実上の最高責任者(処分権限者は知事ですが)と言っていいかと思います。その意味で、永野部長の証言はチエさんの審理の実態、さらに未検診死亡者の取り扱いの実態を解明する上で、欠くことのできないものです。この永野部長の証人採用を求める準備書面(第16)の他に今回提出を予定しているのは次の書面です。

*第14:被告の疫学論(疫学的考え方は集団に適用されるもので、個人の因果関係の判断には適用できない)に対する反論。
*第15:原告主張の「極限違法論」(行政処分の遅れが極限的な場合は、行政は認定申請を棄却する権限を失う)に対する被告の反論への再反論。
*第17:原告主張のチエさん=水俣病罹患の疫学的根拠(お孫さんの胎毛の水銀値から推測して同居のチエさんも濃厚な暴露歴があった)に対する被告の反論への再反論。
*陳述書:被告は1994年に病院調査を実施したさい、I医院の廃院を書類上で確認したのみで、それ以降のカルテ収集に向けた追跡調査を打ち切った。しかし、その時点でもI医院ではチエさんのカルテを保存していた事実がこの陳述書によって明らかとなり、県の病院調査が遅きに失したことに加え、その方法自体ズサンであったことを浮き彫りにする。

 一方被告は、原告の求釈明(第11準備書面)に対する釈明の残りの部分などの書面を提出することになっていますが、現時点(11月20日)では、まだ提出していません。

 また、毎回弁論の後には、報告集会にも足を運んでもらっていますね。今回のテーマは「裁判を支える態勢・運動づくり」これは前回の集まりで何人かの方からも指摘がありましたし、さらに裁判が長期化の様相を見せていることからも、ぜひとも急いで取り組まねばならない課題です。事務局からの提案としては、

1.毎回、法廷の後に「支援ニュース」(仮称)を作成、
2.それをさまざまなルートを通じて配布、情宣してもらう、
3.水俣現地をはじめ各地で溝口さんを囲む集まりを設定してもう、

 などを考えています。特に、ミニ集会については溝口さん自身「いろいろな方と出会い、お話してみたい」と意欲的です。ぜひ相談にのって下さい。
 それでは、第8回口頭弁論の傍聴および支援態勢づくりへの御協力のほど、よろしくお願い致します。

2003年11月20日
*溝口棄却取消訴訟弁護団事務局
  山口紀洋(弁護士) 荒谷徹 鎌田学
  鈴村多賀志 高倉史朗 平郡真也
*〒105-0003 港区西新橋 1-8-7 藤波ビル4階
       千勝法律事務所 気付
 Tel 03-3593-3596 Fax 03-3593-1398

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