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溝口棄却取消訴訟弁護団東京事務局ニュース 2007/01/12

チエの話 (ちえのわ ) (その17)

次回:河野慶三氏(元熊本県公害部首席医療審議員)の証人尋問
2007年3月9日(金) 13:30〜 熊本地裁

*3月9日13:00 熊本地裁前集合 是非傍聴にご参加ください*
 次回も門前集会・報告集会を行う予定です。河野証人は未検診死亡者の問題解決が急務となっていた1980年代前半に、県の認定業務について主導的な役割を果たしていた人物です。


目  次
12/22法廷報告
緒方正実さん県庁行動

○12/22法廷報告 (鈴村多賀志)

*最初は早期結審で進んでいた
 6月、10月と2回の進行協議で、原告被告双方とも、もうこれ以上の新しい主張、立証は必要ないという流れになってきました。そこで原告側としても義務付け訴訟関連の証人申請(溝口原告本人、二宮正氏、宮澤信雄氏)も取り下げて、春の結審へむけて臨んだ口頭弁論でした。傍聴には患者も含めて、約25人の人々が駆けつけてくれました。
 最初に提出書証の確認後、亀川裁判長から裁判官の構成が変わった(右陪席が変更)ことを理由にと原告本人の尋問をもう一度やりたい、河野慶三氏については原告側の強い要望があれば考えるとの打診がありました。
 これを受けて東弁護士が、河野証人には環境庁(当時)との交渉の経緯や調査の関係などきく必要がある、と主張しました。その結果、約10分程度の休廷後に河野証人を採用し、次回(3/9)に証人尋問を1回入れて6月頃に結審という日程で法廷は進んでいったのでした・・が、

*突然の被告・熊本県の対応  突然、被告・熊本県の代理人(今回から新しい担当者)が二宮氏の「判断条件」批判に対する反論の機会が欲しいと発言して、二宮氏に対する反対尋問を希望するようなそぶりを見せました。これに対して裁判長が、二宮意見書に新たな趣旨で反論をするのか、被告が二宮氏の証人申請をするのか、と聞きましたが、県代理人は明瞭な返答をしません。
 このやり取りを聞いていた東弁護士が猛反発。被告は「判断条件」批判に反論したいと言いながら該当する原告第35、36準備書面にはこれまでなんの反論もしてこなかった。また被告の要望を聞いて第38準備書面(津田氏、二宮氏意見の関係について)も提出したのに、これについてもまともに応えず、「この裁判の争点はチエさんに水俣病の症候があったどうかであって、判断条件云々以前の問題である」と主張しているのみ(被告の第11準備書面についてはHPを参照)ではないか、今頃になって弁論を続けたいなど納得できないと反論したため、県代理人が協議をするために一時休廷となりました。
 約30分の協議終了後、裁判長から再度二宮氏の証人申請をするのか聞かれた県代理人は、それを検討する時間が欲しいと何の進展もさせません。ここまで来ると、さすがに裁判長も苛立ちを隠せず、先ず証人申請を含めて反論の書面を出すことを被告に課します。
 次回の日程を決めて立ち去ろうとする裁判官に東弁護士が更に食い下がり、結審を想定した次々回の予定(7/6)を入れさせました。また溝口さん本人尋問については既に1度やっていることもあり、最終意見陳述で十分であるということになりました。

*方針の決まらない被告の態度に批判
 報告集会では、県代理人の突然の方針転向に憤りも含めた意見や分析が出されました。
 東弁護士は「判決で判断条件に踏み込まれたら、今の時点では52年判断条件が妥当という判決は書ききれないだろうという危機感を持ったのだろう。ただし二宮証人は諸刃の剣で、被告らも自信がない。裁判長ははなからS診断書がだめとは考えていないので二宮証人を聞きたいと思ったのであろう。裁判長の心証もある程度つかめた」と解説しました。
 また高倉氏からは「原告側でも二宮氏の意見書をきちっと議論すべき。被告がその気ならば、覚悟を決めた方がよい」との意見もありました。
 被告・熊本県が今後どのような応訴態度に出るのかは不明です。私たち事務局は早期結審を目指しながら、被告が不当な主張をしてきた時にはきちっと反撃を加えていきたいと思います。
 いずれにせよ今年が大きな山場となります。是非、多大のご支援をお願いします。


○緒方正実さん県庁行動(鈴村多賀志)

 2006年11月27日、緒方さんに対する熊本県の水俣病認定申請棄却処分を取り消す裁決が、公害健康被害補償不服審査会より下されました。その内容は、緒方さんの有機水銀曝露歴(2歳の時の毛髪水銀値が226ppm等)をもっと考慮して認定審査をやり直せと言うもの。
 この裁決を受けて緒方さんは県に対して「国や熊本県は、水俣病事件を日々拡大させている事の罪の重大さに気づいているのか」「今後の私に対する対応を具体的にお聞かせ下さい」とう申入書を潮谷知事宛に出して、12月22日までの返答を求めていました。
 22日午後2時半から溝口行政訴訟の裁判傍聴者も加わって県の対応をただしました。県側は金澤副知事以下、担当部署の幹部らが出席しましたが、潮谷知事は姿を見せませんでした。
 最初に金澤副知事から、裁決の内容は認定相当と理解できる。審査会(既に2年以上も不作為状態にある)を経ずに認定できないか環境省や県顧問弁護士らと検討をしてきた。しかし審査会を経ないとその処分は法的に無効になるとの意見もあり、結局結論が出ていない。この1ヶ月間悩んできた。との経過説明がありました。
 これに対して緒方さんは「私は10年間苦しんできた。なぜ知事の決断で認定できないのか」と訴え、「審査会が開かれない状態は違法だと思わないのか」と問いただしました。金澤副知事の答えは「県に課せられた責任を果たしていない。法律上やるべきことをできていないという認識はある。ただ不作為違法が成立するかどうかは裁判所が判断すること」でした。
 後半には支援者も加わり「認定相当という裁決書の趣旨を重視すべき」「審査委員が固辞するのは判断条件に拘るから、なり手がいないならば公募すればよい」「県の態度は行政不服審査法の趣旨にも反している」「審査会が立ち上がらない負担を被害者に追わせるのか」と様々な角度から追及がされましたが、県幹部たちは「引き続きやらせてください」と答えるのみでした。「裁決を受けて審査を疫学を重視する立場で改善しないのか」の問いには「緒方さんの件については疫学を重視するように書いてあるが、一般に広げるかは審議会で議論すること」と改善の意志さえも見せませんでした。
 緒方さんは終始冷静に訴え続けましたが、県幹部の答えは「申し訳なく思う」「しかし裁決書の結論は『認定審査手続きのやり直し』である」を繰り返すのみでした。ようやく1月中をめどに中間報告をする約束を得て県庁を引き上げたのは5時過ぎでした。
 未認定問題は依然として硬直状況ですが、今後も緒方さんとも連帯して闘いたいと思います。

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