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チエの話50
溝口訴訟弁護団東京事務局ニュース 2015/5/17
(1)水俣病食中毒調査義務付け訴訟 第5回口頭弁論 5月27日(水)11:00〜 東京地裁803号法廷 *法廷後報告集会 12:00〜 弁護士会館1007号会議室 (2)新通知差止め訴訟控訴審 判決 6月25日(木)13:15〜 東京高裁822号法廷 *判決前後の行動予定については、決定次第お知らせします。 |
○4月13日新通知差止め訴訟控訴審 第2回口頭弁論報告
<患者側第5、第6準備書面>
13日の口頭弁論では、原告弁護団が第5、第6準備書面の陳述を行いました。
いずれも前半では、新通知や熊本県の認定審査は、国民が差止め訴訟を提起できる「処分」ではないという最高裁判決が確定している、という国・県(以下行政側)の主張に反論しています。(入口論)
一審(東京地裁)判決が主に引用しているのは、1964年の最高裁判決(東京都ごみ焼却場計画事件)です。しかし、この判決においても、行政側の上記主張が認められるのは、当該行為の公共性・福祉性等と権利被害者の救済とを勘案して、その適法性が極めて高いものである、という前提があることを指摘しています。
そして、S52年判断条件を実質否定した2013年4月の最高裁判決に反する新通知は違法であり、行政側はこの訴訟において、S52年判断条件や新通知の根拠法令やその正当性を、一切主張・立証していない、と論難しています。
また、社会が組織化・複雑化した現在では、行政の個々の行為についても、一連の行政行為のなかでその行為が果たす役割を考慮して、その「処分性」の有無を判断するという考え方、判決が主流であることを主張しています。
後半では、新通知の作成過程の杜撰さ、違法性について明らかにしています。
私たちの情報開示請求によって、環境省の担当者(小林秀幸特殊疾病対策室長、飯野企画課長補佐)たちは、新通知を根拠づける資料を集めてはおらず、会議の議事録・協議録も作成していなかったことが分かりました。
そして行政側は、以前から「総合的検討」をしていたと主張していますが、ただ言い立てているだけで、何ら証拠立てるものを一切得ていなかったことも明らかになりました。
(詳細は次項「○環境省行政文書開示請求」や添付資料を参照してください)
<何も答弁しない国・熊本県>
これに対して、行政側代理人は、入口論で終始した答弁書のみで充分であり、それ以外の訴えについては一切答弁する必要はない、という回答をしました。
<拙速な結審>
新通知差止め訴訟の控訴審は13日で結審し、6月25日の判決言い渡しが告げられました。
たった2回の口頭弁論では、新通知の実態に立ち入ることなく、差止め訴訟が提起できるか否かという入口論に止まる判決が予測されます。
弁護団では、この訴訟は行政訴訟の将来を決する重要な案件であること、新通知が与える被害・損害は、原告・佐藤さん一人に留まらず、被曝露地域全体の30万人に広がることを主張した最終準備書面を5月11に提出しました。
判決当日は、傍聴席を埋め尽くし、東京高裁裁判官が、水俣病事件の解決に向かう姿勢を見せるのかどうかを注目するようお願いします。
○環境省行政文書開示請求の結果
<新通知を否定する資料ばかり>
新通知を作成するにあたって、環境省担当者がどのような資料を参照したのか、情報開示請求を行った回答が、添付資料です。
一見して、新通知の正当性・適法性を支持する資料が一切ないことが分かります。
まず、資料のB、D、Fは、環境省独自の見解または単なるお知らせであり、新通知作成に何ら資するものではありません。Gは、Fさん訴訟最高裁判決文@と溝口訴訟最高裁判決文Aから、S52判断条件について判示した部分を単純に抜粋したものです。
H〜Jは現行法令そのものであり、KはS52年判断条件です。
新通知で唯一引用されたのは、20年以上前の1991年中央公害対策審議会答申Lのみです。
しかしこの答申も、情報公開された速記録によれば、感覚障害のみの水俣病の存在があることを井形昭弘委員長(第6回委員会1991年年10月9日開催)から告白されていながら、裁判上の国の都合によって、その事実をもみ消してまとめられたものであることが分かっています。(日本精神神経学会のwebページに公開された速記録の全文が掲載されています)
また、メチル水銀汚染の広がりや時期については、水俣病患者や支援団体による自主検診によって、中公審答申よりも遥かに広がり長期化していることが分かっています。そもそも、行政側は地域・期間を判断するのに必要な住民調査をしていません。
1991年以降の新しい医学的知見に関する資料は、一切ありません。
しかし、@Aの最高裁判決を踏まえるならば、この20年間の間に蓄積されてきた医学的知見を集めなければ、医学的な内容を持つ通知を新たに作成することはできません。
新通知では、申請者のメチル水銀曝露を判断するにあたって、違法・不正な認定制度によって限定選別された認定患者が、申請者の地域、家族にいることを条件にしています。また、S30年当時の地域の食生活実態を無視して、漁業関係者しか大量の汚染魚を食べていなかった、という偏見に満ちた記載をしています。
しかし、これらを裏付ける根拠となる資料は26件のリストの中に一つとしてありません。
そして残る資料は、全てS52年判断条件に固執する行政の姿勢を批判し、現在の認定制度や認定方法を改善することを求めています。
特にEの下田さん裁決では、自らの過去の審査例を挙げ、これを変更し@Aに基づいた審理を行い、逆転認定をしたことを明言しています。
新通知は、これを全く考慮していません。ただリストに掲げているだけです。
<総合的判断をしていたという証拠はない>
行政側は、以前からS52年判断条件の4症候パターンに合致しない場合も総合的な検討をしていたと主張しています。あまつさえ「最高裁は誤解をしていた」(環境省保健部 4/30西日本新聞朝刊)とさえ言い放っています。
しかし添付資料によると、担当した飯野氏は、熊本県庁で、提示された資料を閲覧しただけで、メモの一枚もとらず、レジュメも作成していません。そして新通知作成の会議の場では、その曖昧な記憶をもとに、「熊本県の認定審査には問題がないようだ」と口頭説明しただけです。 いかに杜撰な調査だったかは、閲覧した資料の数や、具体的にどのような総合的判断をやっていたのかを説明できない(2014/3/7 マスコミ向け勉強会)ことで明白になっています。
そして小林室長以下の環境省担当職員は、何の裏付けなく、「これまでの認定審査の実務の蓄積等を踏まえ」た新通知を作成したのです。
このようにな杜撰・恣意的な過程で作成された新通知には、何ら正当性はなく違法であり、即刻撤回されるべきです。