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溝口訴訟弁護団東京事務局ニュース 2016/01/09

チエの話 (ちえのわ ) (その54)

(1) 水俣病食中毒調査義務付け訴訟(原告佐藤英樹氏)判決
  2016年1月27日(水)13:30〜 東京地裁803号法廷
   (チエの話53で判決の時間を13:00と案内しましたが、これは誤りです)
    判決後に集会、厚労省抗議行動を予定しています。詳細は調整中です。

(2) 津田訴訟(水俣病食中毒調査義務付け訴訟) 第2回口頭弁論
   2016年3月9日(水)13:30〜 東京地裁522号法廷
   *法廷後に報告集会を予定しています。


○2016年12月16日津田訴訟 第1回口頭弁論報告(鈴村)

<加害者であることを忘れた被告の態度>

 第1回口頭弁論では、双方の訴状、答弁書の確認の後、原告の津田敏秀医師と、原告代理人の山口弁護士による意見陳述が行われました。
 ところが、原告が意見陳述をしようとすると、被告代理人が、「原告適格性を争うので、意見陳述を認められない」と、抵抗をしてきました。さらに、山口弁護士の意見陳述については、訴状以外のこと(答弁書に対する反論)に触れるのは、認められないと言い出しました。
 これに対して山口弁護士が激しく抗議し、閉廷後も、発言した田野倉代理人に詰め寄る場面もありました。
 初回の口頭弁論で原告や代理人の意見陳述を、被告側が妨害することなど、少なくとも水俣病に関する訴訟においては、過去に聞いたことがありません。これは、被告の代理人が、自分たちが加害者の一端にいることを完全に忘れている対応です。国と熊本県の加害を明らかにした2004年のチッソ水俣病関西訴訟最高裁判決を無視・忘却している行為です。
 法廷後の報告集会において、津田氏は、いったん公害や薬害の被害者になったら、自身がボロボロになりながら自分で闘わなければならない社会であると、この国の現状に警鐘をならしました。

<原告の主張・訴状>

●原告は、2012年1月と7月に、熊本県天草市と鹿児島県出水市で、水俣病患者を診断して、それぞれ所轄の保健所に報告を行い、法定調査の実施を要求した。しかし、天草・出水の両保健所とも、法定調査を行わなかった。
 原告はこの水俣病事件の実態に危惧と重大な不正を感じ、当該県と厚生労働大臣に対して、食衛法に基づく調査と報告を実施する旨命ずること、及び違法確認並びに国家賠償を求める。

●被告らには、食中毒の発生・拡大を防ぎ、国民の健康の保護を図るために、食衛法に基づき、食中毒調査と報告をする義務がある。

●被告らは、食衛法に基づく適切な調査をしていないため、水俣病に関する適正なデータを集めることができず、正しい水俣病像が作れず、あるべき補償制度を作ることができない。

●そして、不適正・不当な認定制度(本人申請主義、違法な52年判断条件)によって、患者の放置・切り捨て施策を続けている。

●原告は現実に、食中毒患者を診察・診断したにもかかわらず、その医療行為が何ら患者の医療救護にならず、公衆衛生上の意義も生まない現状に、自己の医師として水俣病患者を救済できぬ責任感と罪悪感、焦燥感、無力感に襲われ、行政に裏切られたことにより大きな失望感を実感するなど、重大な精神的肉体的経済的な損害を生じている。

<被告の主張・答弁書>

●食衛法に基づく調査は、行政庁が食中毒事件の発生を確認し、対策を講じるためのものであり、この調査によって国民との間で何らの権利義務を形成したり、その範囲を確定するものではない。よって行政訴訟が提起できる「処分」には当たらない。

●食衛法に基づく報告は、行政機関相互の内部行為であり、直接国民の権利義務を形成し、またその範囲を確定する効果を生むものではない。よって、これにも「処分性」は認められない。

●原告の訴えは、不適法であり却下を求める。


○水俣病新通知差止め訴訟 最高裁の不当な決定

 2015年12月1日、最高裁第3小法廷は、突然、私たちの訴えを棄却・受理しないという門前払いの決定を通知してきました。
 弁護団では、これに抗議する声明を発表し、今後は個別具体的な認定義務付けや損害賠償の訴訟、その他の活動を続け、事実をもって国・熊本県の水俣病患者切り捨て施策を正していくことを表明しました。


*水俣病認定基準の新通知差止め行政訴訟に対する最高裁棄却・不受理決定に対する抗議声明
 2015年12月20日 新通知差止訴訟弁護団

 最高裁第3小法廷(裁判長 大谷剛彦判事)は、標記事件に対して、本年12月1日に、上告を棄却し、上告受理申立も受理しないという決定をなしました。
 しかし、環境省総合環境政策局環境保健部長が昨年3月7日に発出した、いわゆる新通知は、部長に作成・発出の法的権限がなく、医学的根拠も全くなく、しかも水俣病52年判断条件を否定した2013年4月16日の水俣病溝口・Fさん最高裁判決の判示に真つ向から反対し・違反していることは明らかです。
 弁護団は、これまで何回も行政文書開示請求によつて、新通知は同部の部長が職員を使つて恣意的に作成したものであり、その作成過程を示す議事録もなく、作成に当たつて疫学データを一切使わず、公平な立場の水俣病専門医師や法的専門家が関与していなかったことを明らかにし、新通知の違法性を確認しました。
 しかし1審被告国・熊本県は、1審、2審、最高裁を通じて、この新通知作成の恣意的な実態と違法性に関して何ら釈明せず、単に、新通知は行政機関の間の通知であって、行政訴訟法の要件である当該行政行為の処分性がない、という点だけを反論しました。
 最高裁も単に行政訴訟の要件の具備の有無だけで、本決定をなしました。
 しかし、水俣病事件は来年で60年を迎えますが、未だに国・熊本県は食品衛生法上の食中毒事件調査を拒否し、不知火海沿岸住民34万人の健康被害に対する救済がなされていないので、現在も多数の水俣病患者が認定申請をし、訴訟を行つています。
 その元凶は、国と熊本県が患者切り捨てのツールとして40年間近くも悪用している52年判断条件であり、新通知はこの基準をさらに狭隘化し、固定化するものです。
 事実、熊本県は最近、この新通知を使用し始め、患者切り捨てに狂奔しています。
 そこで私達は、国と熊本県の水俣病事件行政が憲法に反し、違法であることを明らかにし、水俣病事件の完全解決・完全患者救済をあくまで目指して、水俣病棄却取消訴訟、水俣病国賠請求訴訟、食品衛生法法定調査義務付け訴訟等の個々の訴訟を闘うと共に、政治活動、社会活動を続けて行く決意です。
 今後の一層のご支援をお願い致します。
 以上

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