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溝口訴訟弁護団東京事務局ニュース 2016/04/03

チエの話 (ちえのわ ) (その56)

○水俣病食中毒調査佐藤訴訟 控訴審 第1回口頭弁論
 2016年4月26日(火)11:30〜 東京高裁822号法廷
  12:00〜13:00 厚生労働省前行動 14:00〜16:00 報告集会

○津田訴訟(水俣病食中毒調査義務付け訴訟) 第3回口頭弁論
 2016年5月25日(水)14:00〜 東京地裁522号法廷
 12:00〜13:00 厚生労働省前行動  14:30〜16:00 報告集会(予定)


○水俣病食中毒調査佐藤訴訟 控訴審(東京高裁)始まる

 去る1月27日東京地裁の、門前払いの不当判決を不服とした東京高裁の審理が、いよいよ4月26日(火)に始まります。
 法廷では、佐藤英樹原告の意見陳述を予定しています。また、昼休みの厚生労働省前行動後には、日比谷図書文化会館(日比谷図書館)にて、報告集会を持ちます。
 当日は、食衛法に基づく住民調査が行われずチッソの有毒廃水垂れ流しが放置されたため、水俣病に罹患した患者さんも上京しますので、報告集会での発言も予定しています。
 控訴審では、水俣病の被害実態を顧みない東京地裁判決を厳しく批判して、勝訴を勝ち取りたいと思います。
 引き続き、控訴審の闘いにもご支援を、お願いします。

○3.9 津田訴訟 第2口頭弁論報告   鈴村多賀志

 3月9日の口頭弁論には、前夜の羽田空港濃霧のため、岡山からの飛行機が欠航となり、津田医師は欠席しましたが、原告側が第1、第2準備書面を陳述しました。
 次回口頭弁論では、原告側はさらに主張を補充する書面、証人尋問申請を提出する予定です。
 また、被告側からは、原告第2準備書面で求釈明した事項について回答する書面が、提出される予定です。

<原告第1準備書面の概要>

 今年1月27日の東京地裁判決(原告佐藤英樹さん)が、調査・報告の義務付け請求を却下したことを批判し、改めて津田原告の主張を展開しています。

*食中毒調査・報告の「処分性」について
 東京地裁判決は、食衛法に基づく調査・報告は、諸規制の前段階としての情報収集であり、行政機関内での連絡行為であって、たとえ食中毒患者を「診定」しても、国民に対して何ら権利義務を生じさせるものではない(処分性がない)ので、国民には義務付け訴訟を起こす権利がない、と判示しました。

 第1準備書面では、たとえ行政相互の行為であっても、その目的と手続きが直接国民に関するものである場合や、手続きが必然的に連動して直接国民に関するものとなる場合には、行政処分とみなすべきである、と主張しました。
 食中毒の被害者は、食中毒患者として判断されるからこそ、食衛法の調査手続の中で患者としての法的地位を占め、それに付随する権利を得ることになります。
 しかし、水俣病食中毒事件においては、本来は1956年5月1日の段階で、不知火海沿岸住民47万人の食衛法調査が要請されていたのであり、調査が実施されていれば汚染は水俣湾に限局され、被害者も100人単位で解決していました。
 ところが食衛法の調査も汚染魚介類の規制もされなかったため、チッソは有毒廃液を以後12年間も垂れ流し続け、メチル水銀汚染は不知火海全域に拡がり、被害者数は少なくとも数万人にのぼる事態になりました。
 水俣劇症患者が続々と発生し、不知火沿岸漁村が生き地獄になっている当時、食衛法の法定調査だけが、有効な対策をもたらすものでした。 水俣病の原因が水俣湾沿岸の魚介類にあることは、早い段階から指摘されていましたが、産業育成を優先する政府の圧力によって、水俣病の原因は“不明”とされ、漁業規制等の有効な対策は為されませんでした。
 食衛法調査による具体的な疫学データがあれは、このような不当な圧力を、跳ね返すことができたのです。

 準備書面では、食中毒事件において、データ自体がもつ重要性と、食衛法調査でなければそれが適性に収集できず、食衛法であれば厳密、迅速かつ広範囲に収集できることを、次回以降にさらに詳しく主張すると予告しました。

 そして、原告の津田医師には、医師として医師は医師法により、19条の診療義務、23条の保健指導義務があり、健康増進法5条での地域協力義務があるので、食中毒患者を申告だけで放置することは許されない、と主張しました。
 さらに申告医者としての食衛法上の権利もあり、これについても、次回準備書面で詳しく述べるとしてます。

*違法確認(原告の訴えの利益)について
 水俣病食中毒調査佐藤訴訟の東京地裁判決は、原告の訴えには食衛法によって守るべき権利・地位が明らかでないから違法確認の利益を欠く、と判示して、原告の請求を却下しました。

 第1準備書面では、水俣病公式確認から60年間も、被告の国や熊本県が調査を拒否し続けているため、日々、水俣病患者は死亡し、資料は散逸に任している。従って1日も早く、報告・要請・調査が行われなければ、水俣病事件の実態、食中毒患者の実態は不明となる、と指摘しました。
 また、原告の津田医師としても、申告医師には固有の権利・義務があり、現在では申告した食中毒患者は医療からも放置されたままであり、医師としての権利・義務が果たせないでいる、と主張しています。

<原告第2準備書面の概要>

 被告に対して主に下記の質問をしています。

・保健所長は当時、どんな報告を受けて、法定調査の必要性なしと判断したのか。

・被告側は、食衛法58条事務は、第一号法定受託事務であり、地方公共団体の責任において処理する、と主張している。
 そうであれば、本来は被告3者(国、熊本県、鹿児島県)の間で利害相反関係も予想されるが、被告3者を同時に代理する指定代理人がいるのは、各被告からどのような同意書面を取っているのか。各被告には、それぞれに固有の指定代理人がいるのだから、双方代理は不要である。

・被告は、食衛法法定調査は食中毒患者自体を網羅的に把握するためのものではない、と主張している。
 ならば「患者自体」「網羅的に把握する」と言う意味を明らかにせよ。
 患者自体を把握しないで、また、患者1人を調査しただけで、行政上適切な基礎資料が得られるというのか。

・病因物質(メチル水銀)が特定できなければ、魚介類(原因食品)が特定していても、法定調査はできないということなのか。

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