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環境省要望書(水俣病被害者互助会) 2013年11月12日

2013年11月12日

環境大臣 石原 伸晃 殿

水俣病被害者互助会 会長 佐藤英樹
水俣病互助会    会長 上村好男

要 望 書

 去る10月25日公害健康被害補償不服審査会は下田良雄さんの熊本県の棄却処分を取り消し、認定相当との裁決をおこない、11月1日熊本県知事は下田さんを認定しました。  4月16日の溝口訴訟及びFさん訴訟2つの最高裁判決を踏まえての今回の裁決は、環境省が棄却処分の根拠としてきた「52年判断条件」の完全な崩壊を意味するものです。15000人余の水俣病被害者を切り捨て続けてきた環境省、熊本県らの棄却処分の誤りであることが明白になりました。  本来、被害者の速やかな救済のため施行された公害健康被害補償法は、被害者の増大に伴い、被害の全体像を見ることなく、水俣病認定審査会(専門家・医学者)を隠れ蓑にして、被害者切り捨てを続け、政治解決や特措法といったごまかしの処理策を持って、正当な補償を請求する被害者としての権利を奪ってきました。今回の裁決を契機として、私たちは以下の点を要望しますのでご検討ください。

1、52年判断条件を見直し、認定制度の抜本的改革をおこなうこと
 水俣湾・不知火海の汚染された魚介類を摂取したという暴露要件と四肢末梢優位の感覚障害によって、水俣病の認定がおこなえることは、この間の訴訟等で繰り返し指摘されてきましたし、今回の裁決でより明快になりました。医学的根拠のない「52年判断条件」を再度検証し、被害の事実を踏まえた認定審査の抜本的改革に着手してください。

2、最高裁判決及び今回の裁決に従い、認定審査を速やかに実施してください。
 最高裁判決から7か月、環境省は認定基準について「総合的検討」の内容を検討しているといっていますが、その経緯は何も明らかにされず、各県の認定行政はストップしたままです。速やかにその検討状況を明らかにしてください。
 また、認定申請から10年以上経過するのに、未だ審査が進んでいないケースがあります。速やかな検診・審査を実施してください。

3、水俣病認定審査会の責任と改編
 各県知事は水俣病認定にあたり、水俣病認定審査会の意見を聞き、認定の可否を決めています。この間の判決及び裁決では、この審査会の責任も重大です。審査会のありようを検証し、改編に取り組んでください。

4、今回の最高裁判決、裁決を踏まえて、過去の棄却者について処分の見直しをおこなってください。
 過去、水俣病認定審査では1万5千名を超える棄却処分が出されています。今回の最高裁判決、裁決を踏まえて、処分の見直しを検討してください。

5、水俣病審査における問題点について、以下の点を指摘しておきますので、検証をおこなってください。

(1) 小児期・胎児期暴露の被害者には感覚障害がないことがあることは、環境省作成の小児・胎児性の判断条件にも記載のとおりです。この世代の検診・審査の在り方をご検討ください。

(2) 「対象地域」は汚染された不知火海産魚介類が流通したすべての地域と考えるべきかと思います。海岸部の住民はもちろんのこと行商ルートを通じて多食したと思われる山間地域や不知火海沿岸全域についてその調査を求めます。

(3) 1970年以降の暴露についても、へその緒で1ppmを超えるものがあるとのことです。そのような汚染事実を踏まえ、認定業務に反映してください。

6、被害の全容解明・健康調査等の実施
 水俣病被害の全容は未だ解明されていません。問題の本質的解決のためには、全容解明は不可欠な作業です。被害者の意見を入れた不知火海全域の被害調査をおこなってください。

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