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環境省 申入書 2015年5月28日

2015年5月28日

環境省 総合環境政策局 環境保健部
企画課 特殊疾病対策室 御中

水俣病新通知差止め訴訟 原告 佐藤英樹
上記訴訟弁護団 代表 弁護士 山口紀洋
東京都中央区日本橋 2−16−3−61
吉勝法律事務所
事務局連絡先 鈴村多賀志

申 入 書

1. 来る6月25日に水俣病新通知差止め訴訟控訴審の判決があります。
 これに合わせて、原告患者の佐藤英樹さんが上京し、14時に環境省を訪れますので、原告・弁護団らと公開の場で、新通知について納得いく説明をするよう要求します。

2. 環境省は、2013年4月の最高裁判決は52年条件を否定していない、として「これまでの認定審査の実務の蓄積等を踏まえ、52年判断条件に示された症候の組合せが認められない場合における同条件にいう総合的検討のあり方を整理した」、公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定における総合的検討について(通知)、を2014年3月7日に発出しました。

3. また、同日に環境省内で行われたマスコミ記者向け勉強会でも、担当をした飯野暁・元環境省環境保健部企画課長補佐は、下記のように述べています。

 熊本県からは、これまでの認定例の情報を拝見させて頂きました。個人情報の問題もありますので、我々の方に全部コピーをしてと言うわけではなくて、私どもから県庁の方に行って、拝見をさせていただく、という作業をしております。
 その中で、症候の組み合わせを満たさないで認定したと思われる、必ずしもそう書く訳ではありませんで、そうと理解できる例がございましたので、その例を参照して、そこから、今回の通知を作成するとうい作業をさせて頂きました。

 さまざまな例について内容を確認をして、その中でどういう検討がされたのか、その内容、やり方、文字通り総合検討のあり方を具体化するという作業をいたしました。

 ところが同時に、飯野氏は、その参照した事例の数や、感覚障害のみの事例があったか否か、については把握していない、という到底「内容を確認」したとは考えられない発言もしています。

4. そこで、私どもは行政文書の情報開示を通じて、どのような根拠資料を元に、どんな議論過程を経て、新通知が作成されたのかを、確認しようとしました。

5. ところが、開示された文書により、熊本県が提示した資料については、飯野氏は、これを閲覧しただけでメモの一枚もとらず、策定会議用のレジュメひとつ作成していないことが明らかになりました。
 メモの一枚もとらずに内容を把握でき、口頭で説明できるほど、簡易で少数の資料だったということなのでしょうか。

6. 新通知では、申請者の有機水銀に対する曝露についての勘案項目として、申請者が漁協関係者であること、地域や家族に認定患者がいること等を挙げています。
 つまり飯野氏は、熊本県の提示した資料で、上記のことが勘案され、認定にいたった事例を確認したということなのでしょうか。

7. 行政文書の開示では、新通知策定に関して参照した資料として、26件の資料リストが挙げられています。
 この26資料の中には、過去の熊本県の認定審査について、環境省の主張を根拠付けるものは何一つありません。

8. また、2013年4月以降の文書は、環境省自身の見解・コメントを除き、全てが、最高裁判決を踏まえて認定制度を根本から変えるよう求めています。
 環境省が、52年判断条件を前提とした新通知を作成できるとする根拠・資料が、全くありません。

9. 新通知の作成過程について、議事録も協議録も残しておらず、環境省は水俣病被害者が納得できる説明を、これまで一切していません。
 ここに、最低下記の疑問に明快に説明するよう要求します。

@ 新通知の契機となった溝口訴訟とFさん訴訟の最高裁判決は、どのような経過を経て出されたと理解しているのか。
 最高裁判決は、溝口訴訟福岡高裁判決の事実認定については是認していないと主張するのか。

A 最高裁判決を踏まえたうえで、溝口訴訟福岡高裁判決とFさん訴訟大阪高裁判決を、どのように理解・評価しているのか。

B 溝口チエさん、Fさんは熊本県による棄却事例なのにもかかわらず、認定事例のみを参照すればよいとする理由・根拠何か。

C 2013年以前にも、国の行政不服審査会によって、熊本県の認定審査の判断が否定された事例が、私どもが把握しているだけでも、Oさん(2006年)、Mさん(2009年)、Yさん(1999年)の事例がある。
 少なくとも、これら3例については、当時は国の不服審査会も52年判断条件を前提にして、審査をしていたのであり、当時の不服審査会が、熊本県の棄却処分を取り消したと言うことは、熊本県認定審査会が52年判断条件の運用・解釈さえも適切に行っていなかった事例が、明らかになっているだけでも、3件あるこということである。
 にもかかわらず、これらの棄却事例について参照しなかった理由・根拠は何か。

D 小林秀幸・特殊疾病対策室長は、行政不服審査会は外部の組織だから、その意見は参考程度だと発言している。
 しかし、行政不服審査会の答申は、申請者、熊本県双方の意見を聞いた上で、独立・公平・客観的な立場から判断したものであり、このような組織からの意見こそ、重視すべき指摘ではないのか。

E 熊本県から提供された資料とは、どんな内容(認定審査資料なのか答申のみなのか)で何例あったのか。

F それらの資料について「症候の組み合わせを満たさないで認定したと思われる」と「理解できる例」と判断したのは、誰か。
 飯野氏が資料を見てそう判断したのか、熊本県の担当者から、そのように説明されたのか。

G 具体的に、52年判断条件の症候組合せに合致しないが、総合的判断によって認定された事例とは、どのような症状例であったのか。

H 症候の組合せがなくても、申請者が漁協関係者あることや、地域や家族に認定患者がいることを勘案されて認定された事例とは、実際に何件あったのか。

I 鹿児島県と新潟県、新潟市からは、何の資料提供も受けていないのにもかかわらず、「これまで各県市において水俣病の認定に当たり52年判断条件に基づかない認定審査が行われてきたと捉えるべき特段の事情はなく」という留意事項を記載した根拠は何か。

J 2014年4月30日付西日本新聞朝刊には「最高裁は誤解をしていた」という環境省保健部職員の発言が報道されている。
 この発言した担当者の氏名、および発言の根拠を明らかにせよ。

以上

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