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環境省 熊本県 申入書 2013年4月16日

2013年4月16日

環境大臣  石原伸晃 殿
熊木県知事 蒲島郁夫 殿

水俣病溝口訴訟原告     溝口秋生
上記訴訟弁護団 代表 弁護士 山口紀洋

申 入 書

 本日4月16日、水俣病溝口訴訟上告審において、最高裁判所第3小法廷は、熊本県の上告を棄却する判決を下しました。  この最高裁判決により、2012年2月27日付の福岡高等裁判所の判決が確定します。つまり、熊本県知事が溝口チエに対して行った水俣病認定申請棄却処分を取り消すとともに、熊本県に対してチエを水俣病と認定するよう義務付ける福岡高裁の判決が確定するのです。

 チエの認定申請から39年、チエが亡くなってから36年。ようやく司法による決着がついたとはいえ、行政はあまりにも長い年月、チエの水俣病認定を違法に拒否し銃けてきました。
 その責任は、ひとえに環境省ならびに熊本県にあります。
 すなわち、熊本県はチエの認定申残後、処分を出すまで21年間も放置し、しかも棄却処分にするという認定判断を誤りました。その後も、行政不服審査請求、本訴訟で、チエは水俣病ではないと、根拠もなく主張し続けました。

 さらに、熊本県は福岡高裁の精緻な判決で敗訴しながら、「上告するな」という私どもをはじめ、多くの水俣病患者家族、市民の声を踏みにじり上告する暴拳に出ました。しかも環境省は、熊本県に上告するよう圧力をかけたのです。

 本日の最高裁判決により、こうした環境省および熊本県の対応の誤りが明白なものとなりました。私どもは、環境省および熊本県の患者救済義務を放棄した姿勢に断固抗議します。
 もはや一刻の猶予も許されません。環境大臣および熊本県知事は、私ども患者家族に謝罪するとともに、ただちにチエを水俣病と認定すべきです。
 そして、環境省は、本判決を真剣に受け止め、これまで52年判断条件に基づき、四肢末端優位の感覚障害のみでは水俣病と認めないとしてきた公健法の運用が誤っていることを率直に認めるべきです。その上で、52年判断条件を無効とし、62年判断条件により棄却処分とした全ての患者の見直しを行うべきです。

 チエをはじめ、認定をめぐる争いが今なお続く原因の源には、環境省および熊本県が不知火海沿岸住民の健康被害に係る悉皆調査を実施しないこと、環境省が救済法およぴ公健法上の認定基準である52年判断条件を無効としないことにあります。
 52年判断条件については、既に患者団体はもとより、裁判所、医学界からも、その医学的誤りおよび法適合性の欠如が何度も指摘され、批判されてきました。行政が悉皆調査による被害実態の解明を行っていれば、52年判断条件が現実の水俣病の病像に合致せず、圧倒的多数の被害者を切り捨てる基準であることは、より明確に科学的に証明されたのです。それにもかかわらず、環境省は、何の根拠も示さずに52年判断条件は妥当だと言い募るばかりで、見直しをしませんでした。
 そして、被害調査を踏まえない施策が水俣病問題の根本的解決に結びつかないことは、水俣病の公式確認から56年以上経過した今日において、水俣病救済特措法による申請者が、環境省の予想をはるかに上回る6万5千人に上った事実、さらに、非該当とされた申請者が行政訴訟や損害賠償請求訴訟を提起せざるを得ない事実に端的に示されています。
 環境省および熊本県は、ただちに不知火海沿岸住民の健康被害に係る悉皆調査を実施し、52年判断条件を無効として、適正な認定基準を策定すべきです。

 よって、以下の点につき、申し入れます。

1 熊本県は、チエの処分を認定申請後21年間も放置し棄却処分とした上に、チエは水俣病とは認められないと否定し続け、今日までチエの水俣病認定を遅らせてきた責任を認め、私ども患者家族に謝罪すること

2 熊本県知事は、ただちにチエを水俣病と認定すること

3 環境省およぴ熊本県は、不知火海沿岸など汚染魚介類摂食住民の健康被害に係る悉皆調査を実施すること

4 環境省は、52年判断条件を無効とし、悉皆調査のデータに基づく適正な認定基準を策定すること

5 環境省および熊本県は、これまでの認定申請棄却処分としたすべての患者に対し、新たな基準による審査を行うこと

以上

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