2014年8月1日
東京地方裁判所 民事第38部 B2係 御中
事件番号 平成26年(行ウ)第224号
事件名 食品衛生法に基づく水俣病の法定調査等の義務付け行政訴訟等請求事件
当事者 原告 佐藤 英樹
被告 国及び熊本県
冒頭陳述書
原告訴訟代理人 弁護士 山口 紀洋
頭書事件について、原告訴訟代理人は、冒頭陳述を、以下の通りなす。
第1 冒頭陳述の時間
原告訴訟代理人は、本日の第1回口頭弁論期日において、原告の訴状(42頁)に従って本件訴訟の提訴の意義と理由、さらには被告から答弁書も出ているのでこの反論などを、口頭で詳しく述べねばならないと思いました。そこで原告代理人は極めて控えめに15分間のロ頭弁論を求めました。しかし裁判所はわずか5分間しか許可しませんでした。
民事訴訟法が口頭弁論を法廷審理の原則としているのは、決して審理の効率や能力を上げためばかりではなくて、訴訟関係人の当事者性を確認し、当事者・人間の存在が裁判の一番の価値としなければならないこと、そして裁判は人間が人間を裁くものであることの確認です。さらにロ頭弁論の意義は、傍聴人・国民の前で裁判手続きがなされることの確保なのです。
このように考えて参りますと、裁判所がこの大原則の手続きに5分しか許可せず、写真撮影には2分間を許可したことは、この大原則を忘れているのではないかと危惧します。
さらに裁判所の問題は、これもまた事前に申請していた、補佐人候補平郡真也の申請を認めなかったことです。今日の法廷で被告の指定代理人等は15名を数えます。原告代理人は当職1人です。裁判審理のこれまた基本原則である武器対等の原則に大きく反しています。従って原告側には補佐人を許可すべきなのです。
第2 水俣病事件の経過
水俣病事件の正式確認は1956年5月ですでに58年間が経っています。
ところが恐ろしいことに、その56年後の2012年7月の水俣病特措法の締め切りまでに何と?! 6万5千人の患者さんが申請しました。
また2013年4月16日の最高裁判所の溝口・Fさんの判決では、申請より42年掛かって患者が正式に認定され(当然、患者さん自身は亡くなりました)、さらに現在環境省・熊本県が強行している水俣病患者基準の52年判断条件が明確に否定されました。
従って、本来であれば、環境省と熊本県は、52年判断条件を撤回し、新たな正しい基準を考え、これまでの間違った認定組織を全て改組し、過去に認定制度で棄却した患者さんを見直すべきであったのです。
ところが恐ろしいことに環境省は本年3月7日に52年判断条件に関して新通知なるものを発出して、溝口最高裁判決を否定し、何の根拠もなく新たに患者認定の加重条件を指示し、さらに過去の棄却患者見直しはしないと一方的に通知しました。さらには環境省は水俣病臨時審査会も設置して、患者切り捨てに狂奔しています。
何という傲慢、不正な政府の水俣事件の施政でしょう。
第3 水俣病事件の不正の根本原因
国民は、この水俣病事件の、被害実態も、法も論理も、倫理を無視した行政を、フクシマ原発事件の行政の処理と余りにも似た行政と思い、皆、心から憂慮しています。第4 被告の答弁
ところが被告等は、今回の答弁書でも、原告の請求は、処分性がない、確認の利益がない、という極めて技術的な点のみで、反論をしています。
しかしこれは法治主義と憲法上の国民の権利を全面的に否定するものです。
被告等の反論は、水俣病に対する調査を、極めて抽象的に捉えて、保健所長は食中毒事件があれば、調査し、県に報告する、県知事はそれを厚生労働大臣に報告する、大臣は知事に対して調査、報告を命ずる、と捉え、描いているのです。
これが被告等の欺瞞の手法であると、私は発見しました。
そうではないのです。 1954年水俣病激発地である水俣市袋に生まれた汚染魚介類を幼児期より今日に至るまで摂食してきた原告・佐藤英樹を、本来は保健所長が、1956年に食品品衛生法で調査し、中毒を認め、佐藤英樹をその他の同時期発症した患者と共に熊本県に報告し、熊本県知事は、佐藤英樹をその他の同時期発症した患者と共に大臣に報告し、大臣は佐藤英樹をその他の同時期発症した患者と共に県知事に更なる調査・報告を求めねばならなかったのです。
即ち被告等は、食品衛生法の調査と報告は、行政官庁内部の指示に過ぎないと言いますが、具体的原告・患者を中心に考えて見ますと、同法の調査・報告により、患者は国から同法上、公衆衛生法上、憲法上、法的にも社会的にも食中毒患者・水俣病と認められ、治療・救護の権利を認められる効果が現実に発生しますから、被告等の主張は詐術にしか過ぎません。
冒頭人間主義を私が言いましたのは、このような関連性があり、裁判所に被告の詐術に乗らぬように求めるためなのです。
第5 今後の進行
被告は、今日の段階では、まだ原告の請求の原因に対応されていず、準備書面を提出すると言うことですし、請求の趣旨の第9項に関しては仮執行免説宣言を求めているだけで、まだ反論をされていないようです。
そこで原告は被告のこれらの主張を待って、更なる反論をする予定です。
なお上記の通り、個別佐藤原告に対する行政の不作為の構造を明らかにするために、原告は次回準備書面で請求の趣旨を補充的に追加することを考えています。
以上